それは、何の変哲もない土曜の深夜のことでした。読みかけの本を閉じ、そろそろ寝ようかとベッドに入った瞬間、どこからか微かな、しかし耳障りな音が聞こえてくることに気づきました。配管を交換したトイレつまり修理に戸畑区は最初はエアコンの作動音か、あるいは冷蔵庫のモーター音かと思いましたが、音はもっと澄んでいて、連続的。「チョロチョロ…」。その正体に思い至った時、私の背筋は凍りつきました。音の出所は、トイレでした。 恐る恐るトイレの扉を開けると、便器の中では水面が静かに波立ち、タンクからは紛れもなく水が流れ続ける音がしていました。頭の中は一瞬で真っ白になり、様々な思考が渦を巻きます。「いつから?」「このままだと水道代はどうなるんだ?」「今すぐ誰かを呼ばないと!でも、こんな夜中に?」。焦りと不安で心臓が早鐘を打つ中、私は震える手でスマートフォンを掴み、「トイレ 水 止まらない 応急処置」と必死に打ち込みました。 画面に並んだ無数の情報の中から、どの記事にも共通して、まるで警告のように書かれている一文が目に飛び込んできました。「何よりもまず、止水栓を閉めてください」。止水栓?どこにあるんだ?記事の解説写真と我が家のトイレを見比べ、壁からタンクにつながる給水管の途中に、マイナスドライバーで回せそうなネジがあるのを発見しました。どんなお風呂がトラブル専門チームで枚方市は工具箱からドライバーを取り出し、祈るような気持ちで時計回りに回すと、あれほどしつこく続いていた流水音が、嘘のようにピタリと止んだのです。その瞬間の安堵感は、今でも忘れられません。これが、パニックに陥った私が最初に学ぶべき、そして最も重要な応急処置の第一歩でした。 一息ついて冷静さを取り戻した私は、次に原因の特定に乗り出すことにしました。タンクの重い蓋を慎重に持ち上げて中を覗くと、そこにはまるで理科の実験道具のような、複雑に見える部品たちが静かに鎮座していました。ネットの情報と照らし合わせながら観察すると、どうやらタンクの底にある黒いゴム製の栓、「フロートバルブ」という部品が怪しいとあたりをつけました。鎖が絡まっているわけでも、ゴミが挟まっているわけでもない。指で軽く押してみると、ゴムがプラスチックのように硬化して、弾力性を失っているのが分かりました。長年の使用による経年劣化が原因のようです。 その時、私の頭に悪魔の囁きが聞こえました。「この部品だけなら、ホームセンターで買ってきて自分で交換できるんじゃないか?」。ネットで調べると、部品代はわずか千円程度。業者に頼めば安くても一万円前後はかかるでしょう。数千円の節約は非常に魅力的に思えました。しかし、その考えはすぐに恐怖心によって打ち消されました。もし、自分で交換作業をして、接続を失敗したら?今よりもっとひどい水漏れを起こしてしまったら?ここはマンションの8階。万が一、階下の部屋にまで被害を及ぼしてしまったら、節約どころか、数十万円の損害賠償問題に発展しかねません。 DIYの魅力とリスクを天秤にかけた結果、私は迷わず「プロに頼む」という選択をしました。これは、数千円の工事費を惜しんで数十万円のリスクを冒すギャンブルではなく、「数万円でプロの技術と長期的な安心を買う」という賢明な投資だと考えたのです。 翌朝、連絡した水道業者のスタッフは、手際の良い作業で、わずか30分ほどで劣化したフロートバルブを新しいものに交換してくれました。そして、止水栓を開けると、トイレは嘘のように静寂を取り戻したのです。今回の経験は、私に大きな教訓を与えてくれました。予期せぬトラブルに見舞われた時、最も大切なのは、パニックに陥らず、まず被害の拡大を防ぐための応急処置(止水栓を閉める)を冷静に行うこと。そして、自分の技術と知識の限界を正しく認識し、リスクの高い作業は無理せず専門家に委ねる勇気を持つこと。この二つが、結果的に時間もお金も、そして何より心の平穏も守るための最善策なのだと、身をもって学んだ一夜でした。